放送大学の導入

 放送大学は、通信制の四年制大学です。「放送大学学園法」に基づき1983年に設置された正規の大学で、卒業すれば「大卒」の学歴を得ること もできます。15歳以上であれば誰でも入学でき、高校在籍中に修得した単位が大学の卒業単位に累積加算されます。 全国各地に「学習センター」が設置され、学生の学習(スクーリングなど)の便宜が図られています。

 本校では、2001(平成13)年度から、進路指導の一環として、隣接する西多賀病院との連携のもとで放送大学の受講ができる体制がつくられ(養護学校高等部としては全国で初めてでした)、希望する生徒には選科履修生又は科目履修生としての受講を認めています。 その導入の背景には、「卒業後も勉強を続けたい」と訴える高校生たちの熱心さに打たれた教員たちの努力がありました。そのエピソードを紹介します。


 平成6年の高等部の開設は、それまで通信制の高校にいくしか進学の道がなかった生徒たちにとっては朗報でしたが、高等部を卒業したあとの進路については依然として厳しいものがありました。病院に入院したままで教育を受けることのできる大学がほとんどなかったからです。本校高等部に入学してくる生徒の多くは、病状などの理由で、通学を主とする通常の大学・短大・専門学校に進学したり、会社員や公務員として就職することは困難です。しかし病気と闘いながらでも生活の質(QOL=Quority of Life)を高く保つことも必要で、そのためには卒業後も継続して学習ができる環境を整えることが必要でした。

 

 本校の教職員がその難題に取り組んでいたとき、2000(平成12)年の秋になって、教員たちを大きく勇気づけるニュースが飛び込んできました。放送大学の学長裁定で、 「ある程度の人数(原則20名)が集まれば単位認定試験を高等学校で実施することができる」ようになったのです。これを聞いて、本校の教職員たちは「高等部在籍生徒を含めた病院全体で放送大学利用のための条件整備を進めることが可能ではないか 」と考えました。そしてこれがきっかけとなって、病院と連携しての事業構想が立ち上がったのです。

 

 当時の教職員たちは、「やがて放送大学の受講生が増えれば、西多賀養護学校に学習センターを誘致することも夢ではない。もしそれが実現すれば、近隣にいる放送大学の学生がたくさん集まってくることになるから、西多賀養護学校は社会に大きく開かれた学校とな って、在校生と社会との接点が増える。卒業後の生活を支えてくれるボランティアとの出会いの機会も増すことになる。」と、大きな希望に胸を膨らませました。

 

 そして2001(平成13)年から具体的な準備が始まりました。3月に宮城学習センターの阿部係長さんから高等学校との連携協力についての学長裁定及び沖縄病院での放送大学利用について説明を受けたことを皮切りに、翌4月には西多賀病院南2-1病棟児童指導員と相談の上、準備のための調査が始ま り、宮城学習センターの見学や、単位認定試験の学校開催の可能性・単位認定試験についての特別の配慮事項・面接授業のセンター外での実施等についての協議も行われました。さらに6月には、学校で放送大学科目履修を希望するかどうかの調査・筋ジス4病棟の方々を対象とするアンケート調査が実施され(結果はこちら)、履修を希望する生徒がいることを確認したのち、その年の10月から(第2学期から)の視聴が始まったのでした。

 

 視聴の開始にあたり、西多賀病院では、病院の1室を「学習室」として整備することを決め、CS放送受信機器・プログラム録画の可能なビデオ録画機を各2台程度設置し、録画テープを保管する書架や事務机を配置してくれました。 これによって、通常はCS放送で放送されている講義を病院内で受信・録画し、受講生がその録画を病院や学校で視聴できるようになっています(入院患者は病室で、また本校生徒は学校で「総合的学習の時間」などを活用して、視聴しています)。

 開講後、現在までの受講生は次のとおりです。

年度 第一学期受講生 第二学期受講生
2001(平成13)年度 生徒3名、教員1名
2002(平成14)年度 入院患者6名(うち本校生徒3名)、外来患者2名、教員4名 (資料がなく不明)
2003(平成15)年度 入院患者3名(うち本校生徒1名)、外来患者1名、教員4名 入院患者3名(うち本校生徒2名)、外来患者1名、教員1名
2004(平成16)年度 入院患者2名(うち本校生徒1名)、外来患者1名、教員1名 (資料がなく不明)
2005(平成17)年度 入院患者5名(うち本校生徒3名) 入院患者5名(うち本校生徒3名)
2006(平成18)年度 入院患者2名(うち本校生徒1名) 入院患者2名(うち本校生徒1名)
2007(平成19)年度 入院患者2名(うち本校生徒0名)  

 

 もちろん課題もあります。 今のところ単位認定試験は病院内で受験できますが、過去に放送された講義のビデオライブラリーを視聴したいときや、 卒業条件として必ず受講しなければならないことになっている面接授業を受けるときは、宮城学習センター(仙台市片平の東北大学構内)に出かける必要があり、本人及び保護者の負担が重いという点です。この点を克服し、将来は病院でも面接授業が受けられるようにしたいものです。【写真:放送大学の講義(ビデオ)を見ているところです(2004年度高等部3年生)】

 

 


★このページの作成にあたっては、放送大学の導入に積極的に取り組まれた多賀先生が残して下さった資料(本校保管 )、2002/6/15河北新報、および本校現職員への聞き取りを参考にしました。