2010年9月初版
平成17年(2005年)の春、麻田機長の遊覧飛行の件で,本校教諭がANAに問い合わせてから,いくつかの奇跡が重なって麻田機長さんとベッドスクールの子どもたちとの交流の歴史が掘り起こされました。
学校としても貴重な歴史の1ページが補完され,生徒も先生方もその話に感動していました。
そんな中,ANA側では,このエピソードが社内のイントラネット上で公開され,反響が強まっていくに従い, 「麻田機長の思いをANAグループみんなで再現したい。」という思いが芽生えてきたそうです。
「かつて麻田機長が実現したフライトをもう一度やりたいと提案したいのですが。」
来校されたANA・CS担当者の言葉に,応対した校長,教頭,そしてANAに問い合わせた教諭も驚き,そして喜びました。
遊覧飛行の再現,それは飛行機が飛び交う現代においても,夢物語であることには違いありません。
まして本校のように車いす(電動車いすの生徒も多数います)が大部分を占める病弱の学校では特にそうです。
そんな夢のフライトの予定日は,平成18年(2006年)4月21日(金)となりました。
その事前イベントとして、平成17年11月18日(金)午後、「ANA航空教室」が開かれ,ANAグループの現役のパイロットとスチュワーデスさんたちから、 飛行機が飛ぶしくみや空の旅の魅力などについて、映像を交えながらお話をしていただきました。
そして,フライトに向けて参加するボランティアスタッフの募集も始まりました。
ANAグループ内の様々な部署からなんと100名以上の希望者が集まり,本校の状況を踏まえながら綿密に準備を進めてくれました。
年が明け,2月,3月とANAと学校,そして大部分の児童生徒が入院している西多賀病院で細かいところまで詰める作業が続きました。
しかしその中で,残念ながら病気の状況から当日飛行機に搭乗できない児童生徒も出てくることになりました。
それを耳にしたANAのボランティアスタッフたちは,まるで飛行機に乗っているような感覚になってもらうスペシャルイベントを校内で実施することも 計画してくれました。
フライト当日。
前日まで雨で天候が心配されましたが,くもり空ながらも時折太陽が顔を出す空模様でした。
43年前のフライトのように、どこまでも澄み渡る青空とはいきませんが、これならば眼下も見下ろすこともできるだろうし、雲海も見ることができる 二度美味しい状況になるだろうと思われました。
子どもたちは仙台空港に着くと,大勢のANAのボランティアスタッフと報道陣に迎えられ,とても緊張していました。
でもその緊張も本当にあたたかいANAの方々の囲まれて,いつしか笑顔へと変わっていきました。
午前の第1便,午後の第2便とも,とても素晴らしいフライトでした。
窓を通して目に映る,海,街並み,雪が残る山,そして光り輝く雲海、素晴らしい景色を子どもたちは堪能しました。
そしてその景色とともに素晴らしかったのは,ANAボランティアスタッフの方々の心遣いでした。
便の間には,セレモニーが行われ,このメモリアルフライトのきっかけを 作っていただいた亡き麻田機長に代わり,機長の奥様である洋子様から挨拶がありました。
「亡き主人も今日は雲の上で喜んでながめておると思います。」の言葉に,その場に居合わせた皆さんが胸を熱くしました。
一方,空港に来ることができなかった児童生徒たちのための特別フライトも本校視聴覚教室を舞台に大いに盛り上がりました。
とっても貴重なフライト映像を織り交ぜた素晴らしいもので,大満足の内容でした。
すべてのフライトとも素晴らしいものでした。そして,感動的で,一生の思い出に残ると言っても過言でないものでした。
でも忘れてはならないのは,ANAのボランティアスタッフの皆さんのみならず,書ききれないほどたくさんの人々によってこのメモリアルフライトは 支えられていたということです。きっと、誰も知らないところで大切な準備をしてくださったスタッフもいたことでしょう。
飛行機を安全・快適に飛ばすために、その陰には、どんなに多くの人々の努力があることでしょうか。
支えてくださったすべての皆さんに、改めて、心からありがとうと言いたいと思います。
そして最後に,天国で優しく見守り,自分の後輩たちにも温かい眼差しを送っていたであろう麻田正機長にも, 本当にありがとうござましたと伝えたいと思います。